旭川市いじめ防止対策「旭川モデル」

7月22日から24日までの三日間で、旭川市、東神楽町、札幌市において、横浜市会こども青少年・教育常任委員会メンバーで行政視察を実施しました。

◆旭川市で起こったいじめ死亡事件

令和3年3月に市内中学校に在籍していた女子生徒が公園で遺体で発見されました。その背景にいじめがあるのではないかと調査が開始され、いじめ重大事態として認定され、令和4年9月には、その調査報告書が教育委員会に提出されました。
いじめの内容には集団性的暴行の内容もあり、凄惨なものです。

◆旭川市の再発防止に向けた取組み

先駆的ないじめ対策を行う都市(大津市、岐阜市、寝屋川市)の視察調査を行うとともに、総合教育会議、庁内検討会議、いじめ防止条例制定にかかる懇話会、有識者懇談会などを実施して、令和5年6月には「旭川市いじめ防止対策推進条例」施行、令和6年2月には「旭川市いじめ防止条例基本方針」の改定が行われました。基本方針には児童生徒の考えを取り入れ、今まだ、条例の効果は見えにくいが認知件数が増えていると野悦明でした。
令和5年4月には、市長部局にいじめ防止対策推進部を新設し、教育委員会だけでなく、市長部局と一体となって、いじめの未然防止や早期発見・重大化の防止を図ることとしました。この組織体制は全国初の取組です。

◆主な取り組み

①いじめの積極的な把握に努める。
市長部局にいじめ・不登校の専門相談窓口を設置し、心理や福祉の専門職が児童生徒や保護者等から学校を通さずに直接相談や通報を受け付ける体制のがとられています。それ以外に電話、手紙、チャットなどの多様な手段により、児童生徒や保護者が相談しやすい環境が整備されており、一時は相談件数が50倍にも増えたが、いじめ以外の相談も多く、今は落ち着いているそうです。学校現場からいじめ事案やいじめの疑いのある全ての事案について報告を求めるほか、いじめアンケート調査の実施回数を増やすなど取組を強化しています。
②情報の一元化と迅速な初動対応
市が相談を受け付けた事案と学校から報告のあった事案は、共通のフォーマットで一元管理し、組織内で情報共有が図られるとともに、週1回のいじめ対策会議で、部内の全職員が対処方針を協議しているそうです。その中で、重大化のおそれがある事案については、いじめを受けた児童生徒を速やかに救済するため、直ちに組織内で情報を共有し、緊急支援チーム(市長部局と教育委員会の職員によるチーム編制)を学校へ派遣して、事実確認や指導助言を行い、必要な支援を協議・実施します。また、市の専門職が関係児童生徒と保護者に対し、面談による聴き取りや心のケア等の支援を行います。これは、学校現場にとっては心強いことと思いますし、当該児童生徒の不安に寄り添える重要な取り組みです。
③児童生徒への継続的な支援
いじめ問題では、様々な背景や関係児童生徒が抱える課題により、学校だけでは解決が難しい事案もあるため、市の専門職がいじめを受けた児童生徒の意向に寄り添って、面談等により継続的に支援を行います。そして、被害児童生徒が学校を欠席しているものや希死念慮の訴えのあるもの、性に関わるもの、複数の学校にまたがるもの、SNS等のトラブルで情報が拡散しているものなどを困難ケースと位置付け、対応状況について学校から週1回報告を求めるなど、学校だけでは解決困難な事案に適切に対応し、いじめの長期化・重大化の防止と問題の早期解決に向けた対策の強化を図ります。
④地域との連携によるいじめ防止対策の推進
行政だけでなく、市民も一緒になって、いじめの防止について市民意識の醸成を図り、いじめを受けている児童生徒を見掛けたときは速やかに市や学校への相談・通報を促すための研修会などが開かれています。

◆横浜市では

横浜市では、令和6年3月に初めて、令和2年3月に女子中学生の自死事件の原因がいじめであったと公表しました。大変ショックを受けましたし、当時の常任委員会で長時間にわたっての議論がされました。その中で当時の教育長は「いじめ対策防止基本法の解釈を間違っていた」と答弁し、今日行く委員会全体が、正しく機能していなかったのかと暗澹たる気持ちになりました。その際、この10年間で自死をした児童生徒は41名おり、その原因がいじめであったかどうかを改めて調査を行うことが決定していました。
令和6年度、私はこども青少年・教育常任委員会の委員長を務めています。8月にはこの調査の報告を受け、今後の教育委員会の体制や、いじめ防止対策の取り組みをあためて検証していくことになります。

◆視察を通して

旭川市は小学校52校、中学校は22校あります。横浜市の4つの教育事務所が抱える学校数に比べると随分と少ないわけですが、相談しやすい体制や、重大化を防ぐための専門家の集中投入などはぜひ必要です。教職員の研修も必要です。そのうえで、それを一緒に支え、手助けしてくれる専門家(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、弁護士、警察等)との連携体制を強化していくようにすすめます。何より研修が必要なのは教育委員会ということになります。現教育長は、いじめ事件のあった市の教育長に連絡を取り、対応策を調査して、教育委員会の在り方を変えようと努力していると聞いています。議会からも応援するとともに、その在り方をしっかりと見守って提言していきます。