人工の日陰でまちの暑さを和らげる

神戸市「スマートシェード」プロジェクトの現状と今後

猛暑が年々深刻になる中、屋外で安全に移動し、休憩できる環境づくりが重要になっています。神戸市では、暑さ対策の一環として、道路や広場などに人工の日除けを設置する「スマートシェード」プロジェクトを進めています。今回の進捗会議では、事業を始めた経緯、技術の進化、設置場所や費用、住民理解、自然の樹木との役割分担、今後の展開などについて説明と意見交換を行いました。

「日陰」をつくることから始まった暑さ対策

この事業は、市長からの暑さ対策の指示を受け、2024年度にスタートしました。環境省も、屋外での暑さ対策として日陰の確保が効果的であるとしています。神戸市建設局の「共同研究制度」を活用し、民間企業から技術提案を募集。2社から応募があり、現在は文化シヤッターグループのBXテンパルを中心に、道路上でも安全に使用できる日除けの共同開発が進められています。

実証を重ね、より使いやすい形へ

2024年度に設置された初期型は、2メートル四方の4本足で、手動で開閉するものでした。既存のイベント用製品を道路向けに改良したものでしたが、「できる日陰が小さい」「閉鎖的に感じる」「太陽の位置によって影がずれる」「台風時などの撤収に職員の負担がかかる」といった課題が明らかになりました。その後、2025年度には、約6メートル×4メートルの大型の2本足タイプへと改良。光や風を感知するセンサー、タイマー、自動開閉機能に加え、カメラやタブレットによる遠隔操作機能も備えました。横断歩道で信号を待つ人たちを広く覆うことを想定したものです。一方で、設置には地中に約1メートル四方の大きな基礎が必要です。道路の地下には電気、ガス、水道などの管が埋設されているため、設置できる場所が限られるという新たな課題も見えてきました。

2026年度は小型・シンプル・低コスト化

2026年度の最新型は、設置場所の制約に対応するため1本足となり、大きさも約3メートル×2メートルに小型化されました。機能は光・風センサーによる自動開閉を中心に絞り込み、カメラや遠隔操作機能は省略。必要な場合には、現地でリモコン操作ができます。機能を整理することで、使いやすさと費用のバランスを図っています。費用は設置工事を含めて1台約400万円で、上部の設備だけでは約300万円です。まだ高額ですが、今後の量産化によるコスト低減が期待されています。シェードの布は10年程度の使用を想定し、柱には安全のためクッション材を巻くなどの工夫もされています。色やデザインについても、地元住民に複数案を示して意見を聞き、街並みになじむ落ち着いたアウトドア調のものが選ばれました。

立地に合わせてパラソル型も導入

すべての場所に同じ設備を置くのではなく、歩道が広がっている場所やカフェが集まる場所などでは、景観を重視したパラソル型シェードも導入しています。韓国製の常設型製品で、手動開閉式、費用は1台150万~200万円程度です。日本の安全基準に合うよう、基礎を大きくするなどの対策を行っています。スマートシェードとパラソル型を使い分けることで、設置場所の条件、費用、景観に応じた柔軟な日陰づくりを目指しています。

人が多く、日差しを避けにくい場所を優先

設置場所は、単に空いている場所を選ぶのではなく、日差しの状況や人の流れを確認して決めています。特に、建物の影ができにくい場所、横断歩道の信号待ちなど日向にとどまる必要がある場所、人通りの多い場所、駅からウォーターフロントまでの観光客の回遊ルートなどが優先されています。ただし、地下の埋設物に加え、景観との調和や近隣住民の理解も欠かせません。設置前に目的を丁寧に説明し、色や形の選択肢を示すことが重要です。

樹木か人工シェードかではなく、適材適所で

住民からは「人工物より木陰を増やしてほしい」「もっと緑化を進めるべきだ」という意見も寄せられています。樹木は、日陰だけでなく、景観や潤い、環境面でも大きな効果があります。一方、根を張る地下空間が確保できない場所や、落ち葉、水やり、剪定などの維持管理が難しい場所もあります。スマートシェードは初期費用が高いものの、長期的には樹木の維持管理費を含めて比較すると、経済的になる可能性もあります。樹木と人工シェードのどちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの特長を生かした適材適所の配置が必要です。

年10~20基の拡大と学校などへの応用も

2026年度は、スマートシェード9基とパラソル型2基の設置が予定されています。今後は効果検証や予算、住民の意見を踏まえながら、年間10~20基程度の拡大を検討しています。冬季の12月から3月までは閉じた状態とし、ビルの影ができる場所ではセンサー感度を調整して自動的に閉じるなど、無駄のない運用も進めます。現在は市職員が管理していますが、設置数が増えた場合の管理体制も検討課題です。また、幼稚園、学校のプール、運動場などへの導入を求める声も増えています。放射冷却技術を活用した高機能フィルムなど、新しい素材の活用も注目されています。

まちなかの暑さ対策を面的に進める

猛暑の中では、駅や公共施設に到着するまでの短い移動でも大きな負担になります。スマートシェードだけでなく、薬局やコンビニなどを一時的な休憩場所として活用する「クールオアシス」と連携し、まち全体で暑さを避けられる環境をつくることが大切です。神戸市の取り組みは、技術、費用、景観、住民理解、維持管理など、さまざまな課題を一つずつ検証しながら進められています。横浜市においても、樹木による木陰づくりを基本としつつ、駅前やバス停、横断歩道、公園、通学路など、樹木の植栽が難しい場所では人工シェードを組み合わせることが考えられます。猛暑から市民の命と健康を守るため、「歩いて移動できるまち」を支える日陰のネットワークづくりが求められています。