2040年を見据えた「横浜市立高校のこれから」

横浜市立高校の今後のあり方について、教育委員会から現状や課題、検討の方向性を伺いました。少子化の進行、不登校生徒の増加、通信制高校への進学ニーズの高まり、校舎の老朽化など、高校教育を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化を踏まえ、横浜市では2040年を見据えた市立高校のあり方について、検討を進めています。

少子化と進路選択の変化

今後15年ほどで、中学3年生の人数は現在の約3分の2まで減少することが見込まれています。一方、不登校の生徒が増加する中で、私立の通信制高校を選ぶ生徒も増えています。通信制高校へ進学する割合は、以前の3%台から7.6%まで上昇しているとのことです。市立高校に対する高校授業料無償化の直接的な影響は、現時点では限定的と見られています。しかし、県立・私立高校の定員調整に加え、東京都内の高校や通信制高校への進学など、進路選択が多様化していることを踏まえた対応が必要です。単に募集定員を減らすだけではなく、それぞれの市立高校が明確な特色を打ち出し、生徒から「ここで学びたい」と選ばれる学校になることが重要です。

築60年を超える校舎への対応

施設面では、金沢高校、桜丘高校、東高校の校舎が築60年以上となっています。特に桜丘高校については、耐震上の課題もあり、早急な建て替えが必要とされています。多額の費用をかけて建て替える以上、単に古い校舎を新しくするだけでは十分ではありません。新しい教育内容に対応した学習環境を整えるとともに、地域の図書館や交流機能などを取り入れた複合施設化も含め、「将来にわたって価値のある学校」をつくる視点が求められます。建て替えを、横浜の新しい高校教育モデルを生み出す機会としていく必要があります。

各校の特色をさらに明確に

横浜市立高校では、これまでも横浜サイエンスフロンティア高校の開校や、戸塚高校への音楽コースの設置など、時代や地域のニーズを踏まえた改革が行われてきました。今回の検討では、一部の学校にとどまらず、市立高校全体の特色を根本から見直すことが想定されています。具体的な構想としては、金沢高校と横浜市立大学との連携を一層深め、「市大附属高校」のような特色を持たせることも検討されています。また、桜丘高校では教員養成に関する学びを充実させ、横浜国立大学との連携や、教員を志す生徒の推薦枠拡大などにつなげる考えも示されました。大学教員が高校の授業に参加するなど、高校と大学の学びを切れ目なくつないでいくことも大切です。横浜サイエンスフロンティア高校で進められている大学や研究機関との連携は、その一つのモデルになると考えられます。

定時制高校に求められる新たな役割

定時制高校に通う生徒の状況も、以前とは大きく変わっています。かつては「昼間に働き、夜に学ぶ」生徒が中心でしたが、現在は不登校を経験した生徒や、家庭環境などにさまざまな課題を抱える生徒の重要な受け皿になっています。戸塚高校定時制では、募集定員90人に対し、実際の入学者が20~30人程度となっており、通信制高校を選択する生徒が増えていることも影響しています。一方、横浜総合高校では、午前・午後・夜間の3部制を採用し、多様な生活状況に合わせた学びを提供しています。これからの市立高校には、「毎日、決まった時間に学校へ通う」という一つの形だけではなく、生徒が通学とオンライン学習などを組み合わせ、状況に応じて柔軟に学べる仕組みが必要です。義務教育を終えた後も、すべての若者が学びや社会とのつながりを失わないよう、市立高校がセーフティネットとしての役割を果たすことも重要です。

横浜市だからできる高校教育

横浜市には、約25万人の児童生徒と約2万人の教職員がいます。市が小学校、中学校、高校、大学、特別支援学校を設置していることも、大きな強みです。小・中・高・大学を通じた一貫性のある学びをつくることができ、市内に数多く立地する大学や企業、研究機関とも連携できます。市立高校は9校10課程で、普通科、専門高校、定時制などの多様性があります。この規模を生かしながら、学校間で教育資源を共有したり、生徒が学校の枠を越えて授業を選択したりできる仕組みも検討する価値があります。人口減少に合わせて各校の定員を適正化する一方、現時点では学校数を維持し、地域的なバランスにも配慮していく方針が示されています。

今後の検討に求めたいこと

教育委員会では、部長級のプロジェクトと月1回程度のワーキンググループを設置し、民間事業者の知見も取り入れながら検討を進めています。高校再編や学科のあり方、教育課程の見直し、校舎建て替えを契機とした新たな学校像などについて、他自治体の成功例だけでなく、うまくいかなかった事例も含めて調査していくとのことです。今年度中にたたき台をまとめ、その後、大学教授、学校関係者、保護者などの有識者から意見を聴き、市民からのパブリックコメントも行う予定です。今後の検討では、行政や学校関係者だけで結論を出すのではなく、何よりも現在学んでいる生徒や、これから高校へ進学する子どもたちの声を丁寧に聴くことが欠かせません。不登校を経験した生徒、障害や特別な支援ニーズのある生徒、定時制で学ぶ生徒など、多様な立場からの意見を反映する必要があります。

一人ひとりが自分に合った学びを選べる市立高校へ

少子化への対応が、単なる定員削減や学校再編に終わってはなりません。各校の特色を高めること、多様な学び方を保障すること、大学や企業、地域との連携を深めること、そして老朽化した施設を新しい教育の拠点へと生まれ変わらせることが求められます。市立高校には、進学実績や専門性を高める役割とともに、困難を抱える若者を誰一人取り残さないという公教育ならではの役割があります。2040年を見据え、子どもたち一人ひとりが自分に合った学び方や将来を選ぶことのできる、「横浜市だからこそ実現できる高校教育」につながるよう、今後の検討をしっかりと注視していきます。