これからの自治体に求められる防災・減災対策          ―「自助・共助・公助」をつなぎ、災害に強い地域へ―

久々の連合神奈川議員団会議の総会と勉強会が開催されました。リスク管理・危機管理の専門家である浅野氏による、防災・減災をテーマとした講演を聴講しました。講演では、熊本地震をはじめとする大規模地震や、近年全国各地で相次ぐ豪雨災害の事例を踏まえ、自治体や企業が直面する課題、地域における共助の重要性、災害時の物流・受援体制などについて、具体的なお話がありました。

想定外を減らし、現場で判断できる体制を

災害時には、あらかじめ想定していなかった事態が必ず起こります。だからこそ、できる限り「想定内」を増やし、対応方法をマニュアル化するとともに、緊急時に誰が判断し、誰が行動するのかを明確にしておく必要があります。一方で、マニュアルを作るだけでは十分ではありません。実際の災害現場では、地域や避難所ごとに状況が異なります。現場で柔軟に判断できる人材を育て、訓練を重ねていくことが重要です。

都市型災害で深刻になる「トイレ問題」

電気や水道、下水道が停止すると、都市部ではトイレが使えなくなる可能性があります。講演では、災害発生後、3時間以内に約4割、6時間以内に約7割の人がトイレを必要とするという説明がありました。食料や飲料水だけでなく、携帯トイレや簡易トイレを備蓄することの重要性を改めて認識しました。家庭や事業所における備蓄を促進するとともに、避難所で必要となるトイレの数量や設置場所、使用後の処理方法まで具体的に検討しておかなければなりません。

自助だけでは乗り越えられない

家庭で1週間分の水や食料を備蓄していても、道路や物流網の復旧が遅れれば、それだけで生活を維持することは困難です。行政による「公助」にも、発災直後は限界があります。そのため、住民同士、地域団体、企業、自治体などが支え合う「共助」の仕組みが欠かせません。町内会などの地域組織への加入率が低下する中では、組織への加入だけにこだわらず、防災をきっかけに隣近所のつながりをつくることも必要です。例えば、携帯トイレや発電機などの防災用品について、地域内で「誰が何を持っているのか」「困ったときにどのように助け合うのか」を確認しておくことも、身近な共助の第一歩になります。

支援物資を必要な人まで届ける

大規模災害では、全国から支援物資が届いても、それを避難所や在宅避難者など、必要とする人のもとまで届けられないことがあります。いわゆる「ラストワンマイル」の問題です。この課題を解決するためには、物資の受け入れ、仕分け、保管、小口配送を担う中継拠点が必要です。自治体職員だけで対応するのではなく、物流会社や民間事業者の専門性を生かすことも重要です。また、国や県、近隣自治体、民間企業などからの支援を円滑に受け入れる「受援体制」についても、平時から役割分担や手順を明確にしておかなければなりません。自治体の枠を超えた広域連携と、地域の実情に応じた拠点づくりの両方を進める必要があります。

避難所運営に民間の力を生かす

避難所の運営状況は、現場のリーダーシップや経験によって大きな差が生じることがあります。行政職員や地域住民だけに負担を集中させるのではなく、施設運営や物資管理、イベント設営などのノウハウを持つ民間事業者と連携することも有効です。また、女性や子ども、障害のある方などの声を避難所運営に反映し、プライバシーや安全、人権が守られる環境を整えることが重要です。音や光などに敏感な方への個別スペースの確保、福祉避難所や医療機関への移送など、状況に応じて柔軟に対応できる体制が求められます。

防災・減災に「完成」はない

気候変動によって、これまでの想定を超える豪雨や猛暑が発生しています。また、高齢化や単身世帯の増加、地域コミュニティの変化など、社会のあり方も変わり続けています。そのため、防災・減災対策に「これで完成」というゴールはありません。ハザードマップや地域防災計画、避難所運営マニュアルを定期的に見直し、訓練で明らかになった課題を次の改善につなげることが大切です。

今回の講演を通じて、これからの自治体には、特に次の取り組みが必要だと感じました。

  • 携帯トイレや簡易トイレを含む備蓄の拡充
  • 在宅避難者も対象とした物資供給体制の整備
  • 物流事業者などと連携した受援・配送体制の構築
  • 地域や自治体の枠を超えた共助・広域連携の強化
  • 避難所運営を担う人材の育成と実践的な訓練
  • 災害時要援護者の個別避難計画と支援体制の充実
  • DXを活用した避難所・物資・要支援者情報の共有
  • 民間事業者や地域団体との平時からの協定づくり

防災は、行政だけで進められるものではありません。住民、地域団体、企業、福祉・医療関係者、行政、議会が、それぞれの役割を持ち寄ることが必要です。今回学んだ内容を、地域の皆さまの声と結び付けながら、実効性のある防災・減災対策につなげていきたいと思います。